こういう人間です
盛岡市在住。ライター。
性格偏屈。趣味はないが嫌いなものはない。 20年余りの都会暮らし、 10年余りの山暮らしを 経て現在6年目のニュー タウン暮らし。 いまいるところがいつも いちばん好きなところ。 メールはこちらへどうぞ 以前の記事
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朝刊に作家のA氏がI賞授賞の小さな記事。 寝不足のモーローとした頭で読んでいて目が覚めた。 「や、これはめでたい」と思ったけど、 昔のように電話して「おめでとうございます」とも言えない。 なにせすっかり御ぶさたなのだ。 賞に縁のなかったA氏が初めて某賞を受賞したとき、 ぼくはアパートの一人暮らしで徹夜の仕事をしていた。 深夜に始まって明け方に終わるというヤクザな仕事だったけど、 朝刊がカサッとドアの郵便受けに差し込まれるころには、 いつもウイスキーを飲んでいた。 仕事が終わったばかりで頭がカッカしているから、 眠くても眠れない。だからウイスキーのストレートをカポリと飲む。 疲れ切っているのにだんだん元気が出てきて、 でもそれは線香花火の燃え尽き直前の元気で、 あとはグッスリ眠れた。 あの朝も、妙にハイになって配達されたばかりの朝刊を広げたら、 A氏の某賞授賞の記事に出会った。 ぼくはウイスキーグラスの横にある受話器を取り上げて A氏の事務所に電話した。 「どうせ留守番電話になってる。テープにおめでとうございますと 吹き込んでおこう」と思ったのだ。なにせまだ5時だった。 「ルルル」とベルが鳴ったとたんにいきなり本人が出た。 「ラッシヤマです」 「あ、おめでとうございます。おはようございます。ナツヤです」 「あ、ナツヤ。いつ聞いたの」「朝刊に出てます」 その後のA氏の電話が楽しかった。 「朝刊、まだなんだ。なんて書いてある。読んで!」 ぼくは記事をそのまま読み上げた。 なんだか先生の前で教科書読んでいる気分だった。 読み終えると、A氏は朗らかな声で「ありがと」と言った。 本当はA先生というべきなのだろう。 たしかにぼくにとってA氏は文章の師で、 駆け出しのフリーの時代に徹底的に鍛えられた。 頭にきてこっちがゲラをさらに直すと、その上からさらに直された。 A先生は(ここでやっぱり先生にしよう)数年前に山小屋に遊びに来た。 取材の合い間に1時間昼寝して、それから畑のルッコラをムシャムシャ 食べながらビールを飲んだ。「ちゃんとやってるんで良かった」と おっしゃってくれた。「もっとビンボーしてると思ったのに」 昔から口の悪い人なのだ。口の悪いときには機嫌のいい人なのだ。 授賞、おめでとうございます。 ギャフンと言わせるものをお祝いに贈ってやるんだ。 見てろ! ラッシヤマ先生!
by northend
| 2006-10-13 22:48
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