こういう人間です
盛岡市在住。ライター。
性格偏屈。趣味はないが嫌いなものはない。 20年余りの都会暮らし、 10年余りの山暮らしを 経て現在6年目のニュー タウン暮らし。 いまいるところがいつも いちばん好きなところ。 メールはこちらへどうぞ 以前の記事
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今日は次男の陸上記録会だった。 「こないだの授業参観には来なくても良かったけど、今日は絶対、 応援に来てよ」と言われてしまい、後ろめたさもあるから両親は相談して、 結局、動けるのはぼくだから行って来ましたとも! 天気は上々だし会場は車で10分ちょっとの距離だ。どうせ家にいても 気になって仕事なんか進まないから気晴らしのつもり。 それで、次男のエントリーしている 800メートルが始まるずいぶん前にスタンドに着いた。 陸上競技を観るのは大好きだ。運も組み合わせもチームワークもなく、 ただ記録だけ目指すスポーツは気持ちいい。とくに100メートルと、 小学生なら800メートル。小さな学校の子どもが大きな学校の子どもを 負かすと握りこぶしに力が入る。 スタンドに座るとちょうど6年生の100メートルを目の前でやっていた。 コースナンバーと選手名、学校名がアナウンスされ、選手はスッと立って 軽く手を挙げる。クーッ、格好いいなあ、オレもああいうポーズ取りたかった。 100メートルはどんどん進んで、夢中で観戦しているうちに12時になり、 5年生女子の800メートルが始まった。 1レース20人ぐらいずつ走る。4レースやる。 トップでゴールする選手のタイムは2分40秒台。 フーンと唸る。こりゃ厳しいかなと思う。 どうしてかというと、次男はこの2週間ほど毎日、放課後に練習していたが、 ベストタイムが3分10秒を切るくらいだと言ってた。 そのタイムだと女子でもヨロヨロでゴールする子どもたちのタイムに近い。 陸上競技場はゴールにデジタルの掲示板があってタイムがはっきりわかる。 たちまち男子の800メートルが始まり、 次男は最終4レースのスタートだったがアッというまに出番になった。 8レーンのトラックに20人並ぶのはムリだから、800メートルは コーナースタートにして外10人、内10人、第一コーナーを回りきるまでは 内、外のレーンを守って向こう正面の直線で合流という結構、テクニカルな コース取りになっている。3レースまで観ていて、スタートしてからどれだけ スピードに乗って直線に入れるか、それでタイムがずいぶん違ってくるなと 思っていた。最初の100メートルは非常に大事な距離になる。 選手が出てきた。 持参の双眼鏡を取り出す。 次男は内レーンの4コースだ。遠くから見ると小柄だ。外のレーンには 背の高い子がゾロゾロいる。ああ、出遅れて壁ができて、 直線で合流したらさらに壁ができて、前に進めない展開にならなきゃいいが、 と心配してしまう。 しかし見たところ、次男は軽く足踏みしてリラックスしている。 隣の子に話しかけたりしている。外レーンの子たちのほうが鼻息荒そうだ。 いずれ2周で終わるんだから、一気に行けよ、キミは遠慮が多いのだ、 今日は晴れ舞台だ、もう回転寿司のテイクアウトも注文してあるぞ、 どんな偉大な選手だってデビューは地味なんだ、でもこんな田舎レースで 負けるんじゃない、とか、父親のココロは子どもより乱れ始める。 これから始まる大レース ひしめき合っていななくは 天下のサラブレット四歳馬♪ なんだ、なんだ、小学生5年生のローカル競馬で親が緊張してどうするんだ と思いつつ、学校の運動会やロードレースとは全然違う不安も出てくる。 それまでの3レース、やっぱり2分40秒台じゃないと上位には 食い込めない。ボロ負けして落ち込まなきゃいいけどなあと思う。 しっかしあいつ、なんであんなに落ち着いているんだろう。 パンとピストルの音がしてスタート。 次男はいちばん心配していたパターン、先に行かずに壁が崩れるように 外側のレーンの大きな子たちに行く手を阻まれる。向こう正面の直線に出て ビリから3番目の位置。 スタートダッシュで出遅れる どこまで行っても離される ここでおまえが負けたなら おいらの生活・・♪ いや、べつにキミが負けてもわが家はビクともしないんだが(笑) 双眼鏡で見ると次男は無表情だ。 焦ってもいないし、諦めてもいない。負けん気も出していないし、 もちろん後ろに人はいないから勝ち誇ってもいない。 いったいどうすんのか、と思って双眼鏡から目が離せない。 3コーナーを回って4コーナーを回ってスタンド前の直線に来た。 次男の表情は少しも変わらないし、気がつけば順位が三つくらい上がっている。 ここで双眼鏡を手放してレース全体を見たら、トップはただ一人、 2位以下にかなり差をつけて一人旅だ。 でもよく見れば、後続と先頭グループの差が縮まっている。 しかし次男は相変わらず淡々と、無表情に走っている。 1コーナーから2コーナー、また向こう正面の直線に入る。 ここで次男がはっきり仕掛けた。 アクセルをグンと踏み込んでスピードを上げたのが双眼鏡ですぐにわかった。 1人、2人と抜く。けれどもレースはもう終盤に差し掛かっている。 どの選手も最後の力を振り絞り始めた。だから次男はもう一人をなかなか 追い抜けない。 3コーナーを回って4コーナーを回る。次男はずっと外側のレーンを 走らされている。そうしないと追い抜けない。「こいつ、消耗しないかな」 と心配になる。やっと直線に入った。さあ、あとは内外、関係ない。 真っ直ぐ100メートル走ればいいんだ。 そう思ったが、直線に入ったとたんにどの選手も必死の形相だ。 へばっている子もいるが、ここで勝負を仕掛けてくる子もいる。 ジリジリ順位を上げてきた次男だが、まだ12,3番手。 まあ、持ちタイムからすれば善戦だな、よくやったよと父は一安心。 ところが奇跡か神がかり 居並ぶ名馬をゴボウ抜き♪ 驚いた。スタンドで観戦しているぼくの目の前で次男はさらに スピードアップ。涼しい顔で一気に数人追い抜いてしまう。 あとはこっちも後ろ姿を追いかけるだけだ。 なだれ込むようにゴールした次男のゼッケンだけは見届けた。 タイムは48秒台が出ていた。へえー、すげえ。 夜、テイクアウトのお寿司で次男をねぎらう。 「おまえなあ、800は前半のタイムで決まるんだ。ゴール前で あんなに飛ばせるんだったら、前半、もっと走れば5秒は縮まったぞ」 「お父さん、オレは前のレース観てて、2周目のみんながガックリ遅く なるのわかったから、後半勝負にしたんだ。お父さんなら褒めてくれる と思ったけどなあ」 あの名曲、『走れコウタロー』には、 いつしかトップに躍り出て、ついでに騎手まで振り落とす というオチがあったなあ。 次男は結局、練習タイムを20秒も縮めた。 全体の順位もぼくの予想をはるかに上回った。 この結果に文句を言う親は、馬に振り落とされても文句は言えない。 (文中、引用歌詞はご存知、『走れコウタロー』でした)
by northend
| 2008-07-01 22:55
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