こういう人間です
盛岡市在住。ライター。
性格偏屈。趣味はないが嫌いなものはない。 20年余りの都会暮らし、 10年余りの山暮らしを 経て現在6年目のニュー タウン暮らし。 いまいるところがいつも いちばん好きなところ。 メールはこちらへどうぞ 以前の記事
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日帰りで東京出張。 3時から1時間の取材予定だったので、楽に日帰りできる。 と思っていたら、予定が1時間繰り下がった。 そのことは当日の昼前にわかっていたらしいのだが、 ぼくは家を出てしまい、連絡が取れない。 編集の人と2時半の待ち合わせだったので、 取材の1時間半前に落ち合ってしまった。 こういうとき携帯電話があれば、新幹線の中で連絡を受けて、 「そうか。1時間遅くなるならあの店にでも寄ってみるか」となるのだが、 何せふだんは家にいてパソコンと向き合っているだけだから携帯がいらない。 待ち合わせは私鉄の駅前の喫茶店。 昼下がりにボケーっと通りに面した椅子に座って外を眺めていると、 不思議な気分になる。ぼくはすぐ不思議な気分になってしまうな。 人を待つ、あるいは時間をつぶすというのはわりと好きなほうだ。 いるんだかいないんだかわからないような人間になれる。 まわりにも結構、そういう人がいる。 いま、世の中でいちばん役に立たない人間だな。 ベンツがスーッと近づいて、子どもをさらっていく。 運転しているのは母親で、たぶん自宅か塾に連れて行くのだろう。 ピタリと時間を合わせて迎えに来るのは、携帯で連絡しあっているからだろう。 寄り道しない子はこのまま寄り道することなく立派な大人になるんだろうなと、 歩いて5分の距離なのにいつまでも帰ってこない自分の子どもと比べてしまう。 編集の人は文句も言わずに約束の時間に現われ、 「1時間空いたから民芸館に行こう」という。 柳宗悦の日本民藝館はここから歩いても大した距離じゃないらしい。 通りを一本渡ると、世田谷区になったり目黒区になったり渋谷区に戻ったりする。 わけがわからない。どうにか民芸館で、ここは目黒区。 民芸館には初めて入った。ゆっくり観たかったけどあんまり時間がないから急ぎ足の見学。 李朝がたくさんあって、それも溜め息の出るようなものばかりで、二人で溜め息ばかりついていた。伊万里の染付と古薩摩の角深鉢に持って帰りたいのがあった。買うなんて考えは出てこない。民藝館のなかは撮影禁止だから、玄関脇の大きな甕を撮る。 中に金魚がいて、おっとりした顔で藻を食べていた。 李朝の小さな器の色使いや模様が子どものように無邪気で、同行の人と 「これで酒を飲んだら」とか「これで茶漬けを食べたら」とか言い合っているうちに 腹が減ってきて困った。 4時から5時まで取材。テレビ撮影のスタッフが部屋の外に控えていて落ち着かない。 取材が済んで5時20分に新宿に戻る。 「軽く飲んでいこうか」と誘っていただいたが、日帰りだから断わって5時57分発の 「はやて」に乗って8時20分過ぎには盛岡着。 雨がパラパラ降っていて寒い。 開運橋を渡って大通りを過ぎたところで焼き鳥屋に入る。 鳥正。初めての店だが、そもそも夜の盛岡で酒を飲むのも2回目なので、 どこに入ろうが初めてになる。 鳥正の焼き鳥はどれも小ぶりで可愛い。 最初に「ささみわさび焼き」と「ささみ梅焼き」を頼んだら、2本ずつ4本出てきて、 まるでおままごとの焼き鳥みたいに可愛らしい。 「ぼんぼち」「紫蘇巻き」「はつ」「皮」どれも美味しくて、 お燗してもらった日本酒も美味しかった。 日本酒3本、焼き鳥6種12本、冷やっこ、突き出しが生キャベツと芥子味噌。 〆て2080円。大満足。 それからふらふらと菜園のショットバーに入る。NEATという店。 客は誰もいなくてじつに静かで気持ちいい店。 客がいないから気持ちいいという意味ではなく、一日動いていると人の話し声なんか 聞きたくない気分だから。 ウォッカライムを2杯飲んで、マッカラムを1杯飲んだ。温和なマスターとあれこれ話して、 どういう経緯があったのか、グラッパを飲んでみた。 グラッパはイタリアの酒。ワインの絞りかすの葡萄でつくる焼酎みたいなもので、 マスターが言うには出来不出来が激しい。ぼくは初めて飲む。 このグラッパはまずまずなんだそうだ。飲んでみて、少し甘いけど素朴な感じがする。 ボトルが変わっていて、透明なビンの底にガラスの馬が立ち上がっている。 「なんじゃ、こりゃ」「グラッパはこういう手の込んだボトルが楽しみなんです」 欲しくなった(ビンが)けど飲み干す勇気はない。 それから「これはとっておき」とか「あ、まだ残ってました」とかいいながら あれこれウォッカのボトルの試飲させてくれる。嬉しいんだけど、 ぼくは飲みだすと長くなるたちだから二人の客が入ってきたところでお勘定。 あれこれ飲んでもサービスがあったから〆て3500円。 NEATで飲んでいるときにふと考えた。 今日は盛岡で美味しい酒を飲むために、東京まで往復したんだ。 片道新幹線で出かける人はいくらでもいるだろうが、 ぼくみたいにわざわざ往復して美味しい酒を飲む人はあんまりいない。 たまにはいいな。 自分が大人だったことを思い出す。
by northend
| 2005-05-13 14:27
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