こういう人間です
盛岡市在住。ライター。
性格偏屈。趣味はないが嫌いなものはない。 20年余りの都会暮らし、 10年余りの山暮らしを 経て現在6年目のニュー タウン暮らし。 いまいるところがいつも いちばん好きなところ。 メールはこちらへどうぞ 以前の記事
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
バブルのころ、ルノワールの客はみんなヤクザだった。 ヤクザの溜まり場になっていたのではなく、 ルノワールに入るととたんにヤクザめいた雰囲気を出してくれた。 あのころ、どういうわけか歌舞伎町のルノワールを待ち合わせの場所に指定してくる人がいて、 ぼくは仕事だから午前中の白けた歌舞伎町を歩いて区役所裏のルノワールに行く。 初めて店内に入ったときには驚いた。 まず目に飛び込んだのは、それはそれはきれいなお姉さま方だった。 でも雰囲気が疲れ気味で、化粧の乗りも悪くて、目つきも悪い。 昨夜、面白くないことがあって、おんなじように面白くないことのあったお姉さまに 声をかけ、「ふんと、面白くないね。いまどこ? あ、行くよ」といった電話があって、 だらアーっと集まったのだった。 そういうお姉さま方の隣のテーブルには、これまた疲れた顔の4,50代の男が 二人、三人と向き合ってニヤニヤしている。 少し離れた別のお姉さまグループにけだるそうに顎をしゃくったりする。 別のテーブルではやっぱりだるそうに向き合っている男がいて、 一人が手提げのバッグから札束を出してテーブルに置くと、 相手の男もだるそうに受け取って昆布茶をすする。 ドアが開くと今度はカシミアのマフラーを肩からぶらりと下げた大男が入ってくる。 周りの様子なんか気にもせずに空いているテーブルに座る。 ウエイトレスが来ても、何にも言わないのだ。 ムスッとした顔でやっぱり顎をしゃくる。 するとウエイトレスは丁寧にお辞儀して、ちゃんとコーヒーが運ばれてくる。 とにかく店中の客が顎をしゃくってばかりいるもんだから、 どう見たってヤクザの溜まり場に思えてくる。 小心者のぼくは体が強ばって仕方なかった。 10分ほどすると、またヤクザが入ってくる。 脂ぎった額に長髪がパラリとかかって、銀縁のメガネの奥で細い目が光っている。 店内のヤクザと違うのは書類鞄を抱えていることで、 それでぼくは待ち合わせの相手だと気がついて力が抜ける。 「某日」の翌朝、久しぶりにルノワールに入った。 日暮里駅西口の坂を上ったところにある。 昔、ここはパチンコ屋があったところだ。 お彼岸が近いので通りは人も多くて、朝からウロウロしていたからつい、 入ってしまった。 バブルはじけてもう15年になるのかな。 ルノワールにヤクザはいなかった。 元気なおばさんグループ。 女の子の二人連れ。 窓際で書き物していた中年の男。 待ち合わせらしいサラリーマン。 外人カップルと墓掃除にきた母娘。 でもってぼくは威張りたくなった。 「なんだ、ルノワールがファミレス化してどうする。スターバックスになって どうするんだ」とか思いつつ、 昆布茶を運んでくれたウエイトレスにタバコの空箱を見せて、 「置いてますか」と聞いた。 ああ、情けない。聞くんじゃなかった。空箱を指差すだけでいいんだ。 そうすれば、 「おタバコ、お持ちしますか」と声を掛けてくれ、 ウムと頷けばちゃんと店内買い置きのタバコをトレイの載せて運んでくれる。 でもルノワールのウエイトレスは昔と少しも変わっていなくて、 「ございます。少々、お待ちください」と答えてすぐにタバコを持ってきてくれた。 禁煙に失敗しているぼくとしては、 タバコを店内で買い置きしてくれるルノワールがとても好きになった。
by northend
| 2005-09-24 21:33
|
ファン申請 |
||